映像論 第05回 映像コンテンツ業界を俯瞰する(改)

映像論の5回目です。

今日は、前回の『映像はどこから来てどこへ向かうのか』の後半の話の続きを話します。

本来はタイトルにあるように『映像コンテンツ業界を俯瞰する』話は、ちょっとだけ。

さて、

最近よく見るCMを話題に挙げておきましょう。つぎのCMです。

皆さんも知っての通り、『ローマの休日』の有名な「真実の口」の場面ですね。本物はこうです。(05:43〜)

昔のフィルムに新作の映像を合成することはたまにあり得る話です。最近だと、松竹梅のCMで50年前の石原裕次郎さんと渡哲也さんが共演しています。

ちょっとフィルムのトーンを合わせるのが苦労しています。フィルムが少しピントが甘かったり、ハイライトの質感が微妙なので、新撮のトーンを合わせるのは困難を極めたと思います。

松田優作のデジタルヒューマン 東映ツークン研究所

合成はしていないけど、芦田愛菜ちゃんのCM。かわいいですね。CMの設定が全然嫌味な感じがないですね。

古いところだと、『フォレストガンプ』ケネディ大統領と対面するシーンです。

さて、どうやって合成しているんでしょうか?   答えはこちらです。VFX担当したのはILM(Industrial Light & Magic)です。(01:02〜)

ブルースクリーンの前で何回もテイクを撮影しています。

 

それから今後、開催されるイベントの話も少し。

デザインフェスタ vol.57 5/20-5/21

どれも、面白い内容だと思います。特に『デザインフェスタ』は大学生もいっぱい出展しています。2日間で一番小さい(たたみ一畳分)ところだと2万円くらいの出展料なので、やる気さえあれば出展できると思います。イラストあり、写真あり、映像あり、音楽あり、デザインと言いつつアートやクリエイティブなものなら何でもありです。ダンスやネイル、ヘアカット、タトゥなどもあります。ネイルなども500円くらいから。値段も手ごろ、アマチュアからセミプロ、プロまでが集合します。

さてさて、

映像コンテンツの俯瞰する話の前に、少しだけコンテンツの話をしていきたいと思います。

 

『メディアとコンテンツとは』

私たちは日常の中でさまざまな情報に接しながら生活しています。また、コンテンツメディアという言葉も多く聞かれます。でも改めてこれらを区別したり、説明することは意外と難しいことに気がつきます。それは、これらのキーワードが多様化してきて、時代とともに変化しているからです。
かつては「メディア」と言えば、新聞やテレビなどに代表されるマスメディアのことを指しましたが、今のメディアは必ずしもマスメディアを指すとは限りません。もはやメディアがマス=大衆に向かって発信される形態から、少数や個人から、これまた少人数や個人に向けて発信されるように変化してきています。
ここでは、「情報」、「コンテンツ」、「メディア」とそれぞれ定義と関係について話をしていきたいと思います。

 

情報とは、データの最小単位

文字・数字などの記号やシンボルの媒体によって伝達され、受け手に状況に対する知識や適切な判断を生じさせるもの
データに意味と目的をもたせたもの
テキストや静止画、動画、音楽、音声といった情報全般のことです。

 

コンテンツとは、情報を伝える『かたち』にしたもの

コンテンツとは、情報を伝えるためのある「形」や「方式」(フォーマット)にしたものを指します。
コンテンツは本来、内容・中味の意味だが、この場合「情報の内容、中身」と捉えると間違える。「メディアの中身」とした方がいい。
例)ビデオコンテンツ、映像・音楽コンテンツ、出版コンテンツ、ゲームコンテンツ、ニュースコンテンツなどの価値のあるモノやカタチを指します。

 

メディアとは、情報やコンテンツにもたらす作用や機能、あるいはそれらをもたらす容器または当事者のこと

メディアとは、コンテンツを伝達すること、その行為、その為の機能そのものを指します。つまりメディアとはコンテンツと呼ばれる水を川上から川下に向かって流すことに近いです。

この伝達する行為や機能には次のようなモノがあげられます。

発信
流通(伝達)
受信(掲示)
蓄積

大きくはこの4つがメディアの機能や行為にあたります。

ここでいくつかの疑問が湧き上がってきます。

例えば、ブログ記事はコンテンツなんでしょうか? TwitterやLINEでやり取りされたつぶやきや短い会話はコンテンツなんでしょうか?

答えは、イエスであり、ノーでもあります。それは次のような注意点があります。
すなわち、コンテンツにはその情報量やコミュニケーション量(?)に応じてレベルが分かれます。

それらを仮に上位レベルのリッチコンテンツと下位レベルのプアコンテンツと呼ぶことにしましょう。

リッチコンテンツ

動的な映像やアニメーション、CG、音声を利用した表現豊かなコンテンツ
コミュニケーション力を有する極めて伝達力やメッセージ性などを含んでいるもの。

プアコンテンツ

情報の質が少なく(低く)、パーソナルな内容であったり、不確実な内容であったりするコンテンツ
伝達力やメッセージ性に乏しく、場合によってはひとり言やつぶやきに近いものを指します。

例えるならば、
水が川上の源泉から水道を経由して各家庭に届けられることを思い浮かべてもらえると分かりやすい。

何も加えていない源流や源泉水が「情報」、水道局や蛇口は「メディア」、飲料水としての処理を加え蛇口から出た水道水や缶、ボトルやコップに入れたドリンクは「コンテンツ」と言えるのではないでしょうか。

コンテンツ法(コンテンツ促進法)(平成一六年法律第八一号)

2004年5月にはコンテンツ事業の振興の基本法といえるコンテンツ促進法(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律)が成立した。同法では、コンテンツを「映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラムであって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するものをいう」と定義しており、具体的には映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメ、ゲームなどを指しています。

ここでは、日本のコンテンツ業界を俯瞰し現在の状況を理解するとともに将来の展望を探ってみましょう。

日本のコンテンツマーケットの規模って分かりますか?日本のアニメはジャパニメーションと言われて世界的なコンテンツだとされていますが、実際にはどうなんでしょうか?

日本のコンテンツ、エンターテイメントは世界に通用しているのでしょうか?

この辺の話は、技術とは直接は関係はありませんが、私たちが関わる映像コンテンツやエンターテイメント業界がどれくらいのマーケットサイズで、世界から見てどうなのかを知っておくことは重要だと思います。特に私たちは国際という名前がついていますので、世界に通用するスキルやコンテンツを身につけるべきですからね。

さて、

日本国内のコンテンツ産業規模は、どれくらいだと思いますか?

 

13兆円

 

くらいです。

ここ15年間はほぼ横ばいです。

経産省は2000年初頭、コンテンツ産業がこれからの日本の基幹産業になるとし、将来的な産業規模を15〜20兆円と予測しましたが、その予測は大きく外れました。

その原因はいくつか指摘されているのですが、大きくはコンテンツの市場開拓の失敗、ゲーム市場の飽和とパッケージメディアから配信事業へのビジネス転換の遅れなどが挙げられます。

ゲーム産業は、2006年で日本国内市場は飽和状態になっています。それ以降はほぼ横ばいか減少傾向にあった。2010年から徐々に持ち直してきていますが、コンシューマーからネットワークゲームへの移行、そして近年の携帯、スマホゲームの台頭によって市場が大きく変化してきているのです。

また、アニメーション産業も世界市場に参入すると予測したが、実際のところはそうでもないのが実情です。

日本のコンテンツ産業市場規模(単位:兆円)

dyerware.com

 

 

日本のコンテンツ産業の市場規模(コンテンツ別)2014年
12兆748億円

dyerware.com

日本のコンテンツ産業の市場規模(メディア別)2014年
12兆748億円

dyerware.com

 

コンテンツ業界をどのようにしたら活性化出来るのか?

この難解な命題に答えを出すための糸口を探し出そうと思う。

私たち、次世代を担うコンテンツクリエイター、メディアクリエイターはどんなことを考え、どんな視点が必要なのだろうか?

それは、

国際的な視野をもったクリエイターの創出

プロデューサー、ディレクター、スーパーバイザーの育成

映像という学びの範囲を広げること

日本のCG、ゲーム、メディア系の学校では、その専門領域だけを授業範囲とし、教えています。ですが、海外ではその事情が大きく異なります。海外では、コンテンツ、メディア、アート、テクノロジーとして捉えさまざまなことを教えています。つまり、CGを学ぶことは映像全般を学ぶことであり、ゲームを学ぶことも実写や映画、ドラマを学ぶことなのです。

本当のフィルムスクール(映像を教えるところ)は日本にあるのか?

日本映画大学
日本の唯一の映画に関する単科大学 だが経営は難しい
https://www.eiga.ac.jp/

映画専門大学院大学
2006年4月 – 開校、2012年度 – 学生募集を停止。2013年7月 – 閉校

中国 北京電影学院
もう、学院を出ればほぼ全員がプロになれる 今ではアニメ、CG、ゲーム、VRもある
https://eng.bfa.edu.cn/

「コンテンツ産業の現状と今後の発展の⽅向性」
平成26年1⽉経済産業省 商務情報政策局 ⽂化情報関連産業課(メディア・コンテンツ課)
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/1401_shokanjikou.pdf

日頃から、コンテンツ業界に関しての興味関心を持っておくことが必要だと思います。また、日本の施策としての経済産業省のコンテンツに関しての動向にも注意を払っておきたいと思います。

経済産業省/コンテンツ産業
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/index.html

(例)平成28年度コンテンツ産業強化対策⽀援事業(映像コンテンツの海外展
開と資⾦調達の在り⽅に関する調査事業) 報告書

www.meti.go.jp
 
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000847.pdf
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000847.pdf