本日の講義は急遽内容を変更します、です。
内容的には最新の技術、表現がどのようになってきているのかを押さえていきたいと思います。
本来は、『コンテンツデザイン概論』の中でCG、VFXの歴史、技術的な表現がどのように進化していったか、の話です。
前半は、みなさんも知っているピクサー、ディズニーの話を中心にCGの歴史や表現の発達を見ていきたいと思います。
後半は、VFXとしてエポックメイキングな映画を紹介しながら、CGやVFXの技術の話をしていきたいと思います。
題して
『CG・VFXをめぐる冒険』
です。
VFX HISTORY MOVIES
https://prezi.com/view/NwKokIWtar8dWQSqlRtD/
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本日の講義は急遽内容を変更します、です。
こちらの内容に即して今日のCGの話を進めたいと思います。
ですので、歴史的な背景は上記のスライドを参照ください。
私が何年か前に『デジタルコンテンツ白書』に寄稿した文章に大幅加筆して載せておきます。
もう7,8年前の文章なので最近のネットワークにシフトした状況は描けていませんが、
時間があったら、ゆっくり読んでみてください。そして、みなさんも考えてみてください。
コンテンツメディアの進化系譜
改めてメディアとコンテンツの進化を眺めてみるといくつか気がつく点があります。
『コンテンツ・メディアの進化系譜2022』
新しいプレゼンツールPreziでの表示はこちら
https://prezi.com/view/yUFUxSeajqAOnqTnTyp6/それは、今日の新聞や出版に代表される文字の伝達、写真、映画、アニメなどに代表される映像、そして音楽、ゲームという風にメディアが出来上がって来た中で、近年のメディアはメディアというよりも情報と情報を扱うメタデータをいかに効率よく流通させるかというところに移ってきているように思われます。つまり今までの大きなマスメディアがコンテンツを流通させていくのではなく、いたるところにある小さなメディアやプラットフォームのユーザーが情報発信者となり、流通している情報や自らの情報を小売りにしていく時代なのでということです。
人間が伝えたいもの
人間が何かを誰かに伝えたいと思ったのは、現存しているものでは洞窟の壁画などがそれにあたります。何千年から何万年前の人類の祖先たちが真っ暗な洞窟の中で何かを伝えようとした形跡が今も残っているのです。その伝えようと思った出来事こそ今日で言うコンテンツの原点なのかもしれません。
人間は元々手先が器用でものを掴んだり、投げたりすることが出来ます。絵を描くことも物を持った最初の頃から自然に覚えていったことかもしれません。その習慣が今度は文字を書くことに繋がっていきました。最初は貝殻や動物の毛皮の裏などに傷をつけて書いていた文字が、石盤になり、粘土板になり、やがてパピルスのような植物の茎をなめしたものになりました。そのうちに紙が発明され、紙に書くようになっていなります。それでも書いたものは、それひとつが唯一のものであり、他人へ渡してしまえば手元には残りません。複製というのはもう少し後に出てきた概念なのです。
グーテンべルクが活版による印刷技術を発明し、複数の大量の印刷をすることが可能になりました。これが地上で始めての複製(コピー)の始まりであった。複製は人々に情報の伝達のスピードをアップさせました。遠いところにいる人に手紙や書物を届けることによって、情報が確実に届けられるようになりました。
壁画に描かれたのは今から何万年も前の古代人たちが狩猟や王位の継承を記すために残したものでした。その多くは、「語り継ぐ」という極めて原始的で基本的なものでした。
古代中国ではパピルスを紙の代用として使っていました。後に紙の製法が発明され、活版印刷による大量生産が始まります。石板というのは人類の発達において重要なファクターと言えるかもしれません。映画「2001年宇宙の旅」の石板
「2001年宇宙の旅」で人類が石板に遭遇した事で知能の進化が劇的にもたらされました。類人猿が動物の骨を武器として使い、それまでは狩猟の目的としてのみ使っていた道具というものを縄張り争いの同じ人類の仲間を倒すために使うことになります。そのシーンは、そのあとの骨を空中に放り投げ、当時米国航空会社の象徴であるPAN AMパンナム(Pan American Airways)の宇宙船に置き換わり、遥かな時空を一瞬に飛び越すような場面を見る事となります。
この60年のメディアの進化はまさに動物の骨が一瞬で宇宙船になるほど劇的でした。幼い頃は、まだ白黒だったテレビが総天然色(カラー)となって観音開きの扉とともにやって来ました。まさにリビングに大きなテレビがやって来た瞬間でした。大きな木箱から出された木目のテレビには、ダイヤルとは違うボタンと言う代物とリモコンが付いていました。それまでチャンネルはダイヤルを回さなければ、所謂変えることが出来なかったものでしたが、リモコンというとてつもなく小さくて、簡単な魔法の杖がテレビを離れたところからチャンネルを変えることが出来るようになりました。リビングの中のテレビとテーブルの間に大きな川が出来た気分でした。もう川をいちいち渡らなくても良いのだから。
マクルーハンが予言したもの
かつて60年代はマスメディアの台頭と位置づけられましたが、60年代はマクルーハンの時代であったと言えます。当時一世を風靡した社会学者であるマクルーハンのメディア論が未だに60年の歳月を経てもなお全く色褪せずに読めるのは皮肉なものでした。「メディアによって人間の身体的な機能が拡張される」という予言は、恐ろしいくらい今を言い当てています。
80年代に「ニューメディア」という言葉が流行ります。当時のニューメディアとは文字放送やキャプテンシステムのような副次放送や双方向、ケーブルテレビ、衛星放送などでした。そのニューメディアも新しいメディアが今までのマスメディアに代わることはありませんでしたが、今となってはマスメディアをオールドメディアと名づけても構わないでしょう。マスメディアの誕生と旧体制化
マスメディアは、この60年間のマスメディアの誕生と熟成の中で正直存在感をを失いつつあります。テレビを視聴したり、新聞を購読する習慣が明らかに減少しています。でも、この言葉は慎重に使わなければなりません。別にテレビや新聞を見なくなった訳ではありません。テレビは、今でもリビングの正面に置かれ、その存在感を発揮するために大型化の一歩を辿っています。新聞も発行部数では多少減ってはいるにせよ、宅配のシステムは変わってはいません。生活の習慣が変化したのです。確かに70年代、80年代は、テレビの時代でした。家に帰ると家の明かりと テレビをつけるのが当たり前でした。しかし現在はどうでしょう。テレビは点けるかもしれません。でも
テレビを見ているかといえば家族たちはそれぞれ思い思いの家族団らんを楽しんでいます。スマホでゲームをする者、SNSをやるもの、タブレットでレシピの確認をする者、必ずしもテレビの前にいながらテレビを見ているようで実は全くテレビを見ていないかもしれません。新聞からも情報を見るわけですが、必ずしも紙面を読むとは限らなくなりました。
映画「バックトゥーザフューチャー」で描かれた2015年
1989年に公開されたロバート・ゼメキス監督の「バックトゥーザフューチャー2」の中で未来が描かれていますが、その設定はなんと2015年です。クルマは空を飛び、中空のTEXACOの自動給油機でガソリンが入れられ、映画館では「JAWS19」が公開され、映画看板から立体のサメが飛び出してきます。タブレットPCやナイキの自動で靴ひもが締まるシューズも登場します。ホバーボードという空中浮遊が出来るボードも登場します。しかし意外とテレビなどのメディアの描かれ方は意図的かどうかはともかく大型でマルチチャンネルっぽい画面のみであまり変わり映えせずに描かれていました。改めて2015年のメディアとコンテンツを俯瞰してみましょう。
新しいメディアの流れ、そして今
クロスメディアという言葉もメディアミックスという言葉ももはや古いと言う感じがします。メディアの形態が常に変化している現在においてある特定のメディアを最終の手段や目的にしていく事自体がもはやナンセンスだからです。
そこで現在進行形のメディアの状態を敢えて「クロスプラットフォーム」と呼びたいと思います。スマホや形態、SNSまでもメディアと呼ぶには大げさな感があります。メディアとは呼ばずにプラットフォームと呼び替えてみてはいかがでしょうか。プラットフォームは、デバイスという言い方も出来るかもしれません。「クロスプラットフォーム」は本来は、プログラムやアプリの世界で使われたいた言葉で、OSの壁やいわゆるゲーム実機の壁を取っ払っていかなるプラットフォームにも対応するという考え方です。ユーザーからしてみればプラットフォームに依存しない使い勝手が実現する訳で、いつでもどこでも何ででも”やれる”とか”見れる”が当たり前になりつつある、という訳です。私たちはもっと手軽にメディアやコンテンツを手中にしたとも言えます。
デジタルアニメの先に
1990年代半ばよりそれまでのセルアニメの制作がデジタルに置き換わり始めました。仕上げ(作画と動画中割り)の工程と撮影と呼ばれる今では背景との合成処理の工程が一気にデジタルに対応し、そのためセルによる仕上げと呼ばれる彩色工程や線画台を用いた撮影工程自体は急速になくなっていきました。線画台撮影の暗室スペースがすべてPCマシンに置き換わっていきました。2013年最後のセルアニメとされる「サザエさん」をもって国内で制作されるTVアニメのすべてはデジタルアニメに置き換わることになりました。それどころか、3DCGの発展とCGによるセル画調の表現も可能になっていきました。セルシェーダー、あるいはトゥーンシェーダーと呼ばれる表現方法です。トレースラインとべた塗り、カゲ色の表現が出来るので作画の省力化や複雑なキャラクターやロボットなどのデータを作り出せるようになりました。それによっていくつかのデジタルアニメの映画やアニメが製作されましたが、当初は余り評判は芳しくはありませんでした。それは、モーションキャプチャーによるナマっぽい動きに対してセル画調の表現がどうしても違和感を伴ういわゆる「不気味の谷」に当たるものだとされています。そもそも日本のアニメーションは、ディズニーなどのトラディショナルなフルアニメとは一線を画する作画枚数を制限したり、口パクや目パチを別セルで描くバンクシステムを取る独自の表現方法を確立し進化してきた過程があります。これはリミテッドアニメと呼ばれる日本のアニメの独自路線でした。その日本のガラパゴス化が逆に独特の表現を生み出し、世界に認められたジャパニメーションの原型になったと言っても過言ではありません。そしてここ数年、リミテッドアニメを踏襲する新しい3DCGアニメが見られる様になってきています。サンジゲンや神風動画などに代表されるような手描きアニメやリミテッドアニメのテイストを大事にする表現を意図的に作り出そうとしているのです。
映画の進化がもたらす先に
映画が誕生して125年を迎えました。リミュエール兄弟やエジソンらの功績によりシネマトグラフィーという新しい芸術のジャンルが確立されました。いくつかの技術の発明を経て、映画は大衆の娯楽としての地位を保っています。21世紀にはいり、ジョージ・ルーカスを筆頭とするハリウッド映画人たちのデジタルシネマへの積極的な働きかけにより、映画は急速にデジタルに置き換わるに至りました。今では国内の映画館のほとんどがデジタルシネマ対応、うち約3割が3Dシネマ対応になりました。そして、約90年間続いた24fpsの映画の歴史を変える新しい映画の動きも出てきています。ピーター・ジャクソンやアン・リー、ジェームス・キャメロンらは新しい映画のフォーマットとしてHFR(ハイフレームレート)の映画制作に乗り出している。ジャクソンは2012年から「ホビット」3部作をすべて48fpsで3D立体映画を製作しました。アン・リーは「ジェミニマン」で120fps3Dの映画を製作しました。
「タイタニック」で有名なジェームス・キャメロンは、2022年以降公開予定の「アバター2、3」で同じようにHFR(48fps)のフォーマットを打ち出す予定です。放送業界の4K、8Kの動きとも連動して、ここ数年のでデジタルシネマの技術革新はより一層進むと予想されます。
このクロスプラットフォームの中で何が起こりつつあるのでしょうか?2020年以降、メディアとコンテンツは急激な変化の荒波の中を進んでいくに違いありません。VR の示すもの
GoogleがGoogle Spotlight Storiesで展開している短編CGアニメプロジェクトのひとつ『Pearl』がVRで初!第89回アカデミー賞アニメ短編部門ノミネート。しかも360度VRの作品です。今までの360度にありがちな”これでもかと見せる”コンテンツとは違いクルマの車内からの定点映像にこだわり”大きく見せない”ことで情緒的な感動を呼ぶ仕立てになっています。VRが単なる技術やデバイスツールではなく、表現方法のひとつとしての可能性を示すことが出来るのかが注目されます。
Google Spotlight Stories『Pearl』(2016)
360°VRバージョン 見れない時はタイトル部分をクリックしてYouTubeで観てください!
ノーマルバージョン
監督はディズニーのパトリック・オズボーン。『ベイマックス』と同時上映された短編『愛犬とごちそう Feast』が初監督作品でアカデミー短編アニメ賞を受賞しています。
メイキング Google Spotlight Stories: Behind The Scenes Pearl
もうひとつ、
同じGoogle Spotlight Storiesで作られたVR作品を紹介しておきます。『HELP』という実写とCGを組み合わせて作られたものです。制作は英国VFXスタジオ THE MILL
360 Google Spotlight Stories: HELP
メイキング Behind The Scenes: Google ATAP ‘HELP’
スピルバーグ監督による『レディプレイヤーワン』(2018)
彼はVRや360°パノラマ映像に対しての可能性を示唆しながらも、映像としての演出手法での監督の意図を伝えることが出来るかという警鐘を鳴らしています。続編『レディプレイヤーツー』も製作中。
Google Spotlight Stories 公式サイト 他にもいろいろな試みがされています
そんな彼が、『ウェストサイドストーリー』(2021)をわざわざ60年ぶりにリメイクしたのには古き良き時代の名作映画に対する深い思いがあったと思います。
優れた60年前の物語は決して色あせることはなく、むしろ私たちは
そこから学ぶことの方が多いかもしれません。
“Tonight (Quintet)” – West Side Story 1961/2021 Supercut
そして、
CGの表現能力はますます進化していきます。
そこに
どんな物語や演出を加えていくのかは、
私たち クリエイター が考えていかなければいけません。
ビジュアルエンタテイメントの先に
リアルタイム というキーワード
UnityやUNREAL ENGINEなどのゲームエンジンがゲーム開発だけではなく、映画やドラマ、MV等でも使用され始めています。もはやゲームとCG、VFX、ライブパフォーマンスの領域での垣根はないように感じます。私たちもCGやゲームといった枠を超えて学んでいきたいものです。
「パンナム」TVシリーズ(2011)
オンセットビズという考え方です。撮影の現場でUNREAL ENGINEを使って背景を描画し、その場で合成までおこなってしまう。この先には今流行りの バーチャルプロダクション への流れがあります。
Unityを使ったフルCGアニメーション
日本のPIXARを目指すマーザアニメーションエンターテイメントの作品。全編Unityで描画されています。
AR、XRへの流れ
2017年のeスポーツイベント。会場の人はこのARドラゴンを充分に堪能することは出来ませんでしたが、オンラインで視聴している人たちにとっては度肝を抜かれたと思います。
ここ数年のUNREAL ENGINEとエンターテイメント分野の発展にはすさまじい進化があります。そのひとつがメディアサーバーと呼ばれる高速に高解像度とLEDウォール、XR、AR合成画面を作り出すものです。disguiseもその代表的なメディアサーバー企業です。
みなさんの方が詳しいであろうにじさんじなどのライブエンターテイメント
そのすべての技術は バーチャルプロダクション という新しい技術であり、映像、ビジュアル、エンタメ業界を塗り替えるぐらいのインパクトがあります。
急遽、内容を変えてお送りしました。
いかがだったでしょうか?
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