映像論 第06回 映像の属性 振り返り

本日は、第6回目です。

今日は今までの振り返りとして、映像に関してか改めて考えてみたいと思います。

その前に

ロシアSF映画『スプートニク(SPUTUNIK)』

2021年の3月に公開されたようですが、コロナ禍ではほとんど見られなかった。CGの最新のお手本のような作り方だが、ロシアのCG、VFXの技術力が高まってきている。

そして、

コンテンツ業界を俯瞰してみましょう!

残りの時間は、今までの振り返りに当てたいと思います。

第2回 映像とは?
第4,5回 映像はどこから来てどこに向かうか?
第5回 情報、コンテンツ、メディアのはなし コンテンツ業界を俯瞰する

さて、

今日は、映像について考えを深めてみましょう。

『映像のヨコ軸』 

映像のヨコ軸の話です。

みなさんは、映画やテレビと呼ばれる映像が静止画の集まりだということを知っていますか?

fpsについて

では映画は1秒間に何枚の画像を見ているのでしょうか?

映画は?   テレビは?   ゲームは?

エドワード・マイブリッジが撮影した連続写真の馬のギャロップは世界で初めて

このマイブリッジの連続写真がのちの映画の発明につながったとされています。その意味でこの連続写真の持つ意味は非常に重要です。

映画は1895年にリュミエール兄弟やエジソンが初めてフランス、ニューヨークで上映しました。

フランスのリュミエール兄弟が映画の上映を初めておこないました(1895年)

映画は24fpsです

テレビは30fpsです

fps Frames per second

fpsというのは、1秒間に撮影または再生する映像のフレームのことです。

 

映像はフレームと言う静止画の連続です。

 

一秒あたりのフレーム数をフレームレートと言い、そのフレームレートをfpsという単位で表します。

ではそのfpsの違いが映像として見たときにどのような違いになるのでしょうか?

まずは再生のfpsを変えて見てみましょう。

6fps

12fps

24fps

30fps

60fps

6-12-24-30-60fpsを通しで

 

皆さんはどのfpsが動きを感じる最低だと思いましたか?

映画とテレビではfpsが違う!

動きを再現するためにどのくらいのfpsが適しているのか考えられてきました。

映画は発明当時は16〜20fps程度だったと言われています。古い映画の一場面やチャップリンやキートンの映画を見たことがあると思います。その時に感じるのは人間の動きが少し早くギクシャクしていると感じたと思います。あれは当時のフレームレートと現在のフレームレートが違うので当時の撮影のfpsに対して再生のfpsが高いので早い動きに見えるということです。

現行の映画、アニメは24fpsです。☜☜☜これ意外とみんな知らない! テレビアニメも24fps!

現行のテレビは30fpsです。

それに対してモニターディスプレーの描画精度はもっと高くなってきており、パソコンのグラフィックボードの性能も向上しているのでゲームは60fps120fpsを実現しています。

 

さて、

では撮影と再生時のfpsの違いからどんな映像を創り出すことが出来るのか見ていきましょう。

 

ハイスピード  時間を引き伸す

タイムラプス  時間を縮小する

タイムスライス 時間を切り取る

 

ハイスピード
撮影fps > 再生fps
撮影時のフレームレートが再生時より多い場合、時間を引き延ばすことが出来ます
これはハイスピード、スローモーション撮影と呼ばれるものです。

現在のデジタルカメラは撮影センサーの感度が向上してスマホでも240fpsでの撮影が可能になっています。つまり、映画であれば10倍スロー、テレビでも8倍スローが可能なります。


10,000fps!? – The Slow Mo Guys

Adam Magyar “Stainless -Alexanderplatz-”

Adam Magyar – Stainless, Alexanderplatz (excerpt), 2011 from Adam Magyar on Vimeo.

Adam Magyar “Stainless -Shinjuku-”

Adam Magyar, Stainless – Shinjuku (excerpt) from Adam Magyar on Vimeo.

 

タイムラプス

撮影fps < 再生fps
撮影時のフレームレートが再生時よりも少ない場合、時間を早回しした効果を出すことが出来ます
タイムラプス、微速度撮影、間欠撮影などとも呼ばれます。

TOKYO 2013 4K time lapse

fukushima miharu takizakura 福島県三春町滝桜

最近はハイパーラプスと呼ばれる定点で撮影するのではなく、移動しながらタイムラプス撮影するという新しい撮影方法やそれに対応するスマホアプリも出てきて手軽に移動しながらタイムラプスが撮影出来るようになってきています。

Yokohama Hyperlapse 4K / 横浜 ハイパーラプス JAPAN

Dubai Flow Motion in 4K – A Rob Whitworth Film

iOSのアプリにもハイパーラプスがあるよ


ハイパーラプスの撮影方法

ここまではfpsを時間と空間を

タイムスライス

タイムスライス=時間を切り取る
タイムスライスという言葉を聞いたことがあるでしょうか。その名の通り”時間を切り取る”という意味で使われており、時間を極端に静止させる、あるいは超スローモーションの世界を作り出す意味で使われています。タイムスライスは海外では「バレットタイム」(Bullet Time 弾丸)とも言われています。(※注 タイムスライスTimeSliceは米国では商標登録されているので一般名詞として使えない!!)

時間を極限まで切り取る ハイスピードよりももっと細かく撮影するために
一眼レフカメラ大量に並べて同時(?)に撮影します

映画「マトリックス」(1999)の時には120台のスチルカメラで別アングルから撮影、間をCGでモーフィング補完しています。そして後で背景をCGで作成、実写の動きにマッチングさせる手法を取っています。

1999年に公開された『マトリックス』(1999)

そのメイキング映像です。
VFXスーパーバイザー、ジョン・ゲイターはこの作品でアカデミー視覚効果賞を取りました。

タイムスライスの歴史は古く、1980年代ティム・マクミランという映像作家が実験映像としてリング状の鉄のレールにフィルムを装着して同時にシャッターが切れる装置を開発したのが始まりとされています。その原理は非常に単純ですが、複数の多視点からの写真を撮影しなければならず、装置としての設計は難しいものとされました。時は流れ、デジタルの時代になってようやくデジタルカメラの電子制御が可能になりました。

ティム・マクミランの実験映像 1980-1994

映画『ソードフィッシュ』冒頭近くの銀行強盗が人質に爆弾を仕掛けて逃げるところ爆弾が破裂する。20秒間にわたるタイムラプスシーン。圧巻です!

ユニクロTV-CM “POLONOW”
POLONOW タイムスライスを用いたTV-CM
一方で非常にシンプルな作り方で空中に浮かんだモデルをマネキンに見立ててカメラワークする手法

リコーのデジカメのTV-CMです。
タイムスライスであそぼ! with CX5 原理は簡単、カメラ台数さえたくさん用意できれば精度はどんどん増していきます

フレームレートがどんどん変わってきています。

HFR ハイフレームレート High Frame Rate(Film)

HFRは既存のフレームレートを意識的に変える考え方です。最初にチャレンジしたのは『ロードオブザリング』3部作、『キングコング』などのピーター・ジャクソン監督が映画『ホビット』三部作(2012-2014 ※注)で用いました。3D映画としてRED2カメラ48fpsで撮影、上映もHFR特別上映されました。3D映画を滑らかな動きで再現することに成功しました。
(※注)
第1部 『ホビット 思いがけない冒険』(2012 The Hobbit: An Unexpected Journey)
第2部 『ホビット 竜に奪われた王国』(2013 The Hobbit: The Desolation of Smaug)
第3部 『ホビット 決戦のゆくえ』(2014 The Hobbit: The Battle of the Five Armies)

最近では『ジェミニマンGemini Man』(2019)アン・リー監督で120fpsで撮影、上映も3D+HFRで公開されました。しかし、映画館のインフラの整備が追いついておらず、実際3D+120fpsで上映されたのは国内ではたった3スクリーンのみでした。


ジェームス・キャメロンの『アバター2』『アバター3』もこのHFRを用いて制作されています。予定では60fpsだとされています。しかも3D立体映画です。公開は、それぞれ2021年末、2023年末の予定です。非常に楽しみな映画のひとつです。(⇛⇛⇛どこかで3D立体映画の話もしたいなあ。。。)

マネキンチャレンジ

それ以外にもfpsを意識することで
マネキンチャレンジなどの新しい映像表現方法が発明されています。
ただし、マネキンチャレンジはfpsを駆使するわけではなく、本当にフリーズして撮影しています。
ドラマ『嫌われる勇気』(2017) オープニングタイトル


デジキャン!のゼミでもやってみました! やってみると楽しいよ!
(専修大学ネットワーク情報学部デジキャン!春休みグループワーク2017)

デジタルサイネージ

ちょっと話がどんどんそれていきますが、話すチャンスがなさそうなのでここで話をします。

デジタルサイネージというのは『電子看板』とも呼ばれて、街角や店頭、電車、駅の構内、ホテル、劇場などで見ることが出来ます。ですが、看板という概念はどんどん進化しています。

ネットワークにつながり、コンテンツが自動更新され、インタラクティブになり、情報やグラフィックがどんどん進化しています。
チームラボ
A blackboard where Little People Live / 小人が住まう黒板

DSJ デジタルサイネージジャパン(展示会 今年はオンライン)
出展社数500社以上、来場者数15万人以上

 

まとめ

映像というのは視覚を切り出してタテ軸=『空間』ヨコ軸=『時間』を駆使しながら、新たな解釈を盛り込めるようにしたものである。