映像論 第08回 映像制作における企画、シナリオ、プロット、絵コンテの技法と事例

本日は『映像論』の第8回目です。

だんだん、映像に関しての佳境に入ってきました。

今日はワークフローの中のプリプロダクション。

企画、シナリオ、プロット、絵コンテについて話したいと思います。

まずは、企画に関してです。

企画というのは、

簡単に言ってしまえば、訴求と解決のキャッチボールです。

何かの目的やゴールがあるとして、そこに向かうために

どんな球を投げ、それをどう打てばよいかを指し示していく過程を言います。

今回は、CMの企画について考えてみましょう!

そして、次はシナリオに関してです。

シナリオとは、ドラマや映画の台本のことです。シナリオを書く手順として次のことを考えます。

  1. テーマ
  2. シノプシス 梗概 あらすじ
  3. プロット 筋立て
  4. シナリオ 台本

スライド1

1.テーマ

まずテーマというのは、観客に伝えたいメッセージのことです。

「自分」は「◯◯」に関して「このように」感じており、人に「このように」伝えたいと思っている

2.シノプシス

梗概(こうがい)とか”あらすじ“と呼ばれるものです。シノプシス = “あらすじ

3.プロット

そして、人物の設定、人間関係や心情変化を明確にしていく筋立てに相当するのがプロットです。とともに、シナリオを書く上で実は一番重要なのがこのプロットなのです。
プロットは、”骨組み”のことです。設定と登場人物、そして物語によって大きな流れがどのように変化していくのかを節(プロット)として捉えたものです。ですから、プロットは、物語の骨格であり、これから書くシナリオが線だとすれば、プロットは点であり、プロットの点を線で繋いでいく作業がシナリオライティングと言えると思います。

あとで詳述してます。

4.シナリオ

そして演技の内容を示すシナリオ(台本)からなります。

シナリオとは映画、ドラマなど映像の台本のことで、演技の舞台設定、登場人物、セリフ、ト書きなどを書き込んでいくテキストのことです。小説とは異なり、余計な美文や文学的な装飾は省かれ、シーンや演技を客観的な描写として書くことです。
シナリオライターは、これら3つの要素をひとつのドキュメントとしてまとめて提出します。

「柱」「ト書き」「セリフ」で構成されます。

「柱」(Headline)は、
そのシーン場面の舞台となる場所を指し示します。これはカメラを置く場所(撮影場所)ではなく、登場人物が行動している場所と考えてください。つまり場面の場所は公園だとしても、カメラは遥かに離れた反対側の丘から撮影しているのかもしれません。「柱」は、シーン(登場人物)の位置、時間帯の順に書き記します。最初に◯を書き、ひとマス空けて場所、時間を記します。

「ト書き」(Narrative Description)は、
もともとは歌舞伎用語です。歌舞伎の脚本では、古くから役者の動きや音楽を指定するために、“ト振り向いて”や“トやって来る”のように書かれていました。 映像シナリオにおけるト書きは、行の一番上から3マス空けて、人物の動作やそのシーンの状況を具体的に書き記します。 ここで一つ注意して頂きたいのは、ト書きは常に現在の状況を書き記さなければならないという点です。ですから現在形で書くのが原則です。

「セリフ」(Dialogue)とは、
文字通り登場人物が話す言葉を指します。 セリフは、行の頭に登場人物の名前を書き、その下にカッコを書いてその内容を書きます。セリフが長くなり、改行する場合は2行目からは段落を1マス空けて下さい。続けて上から書くと読みにくくなりますからね。 また、“!”や“?”などの感嘆符の後も1マス空けて下さい。 セリフの最後の丸“。”は省略して下さい。 これらは、全てシナリオを読みやすくするためのルールです。

ひとつの短編ドラマを例にとって、シナリオ、絵コンテ、ビデオコンテ、カット表、香盤表、完成品を見ていくことにしましょう。

見比べることでいろいろなことが見えてくるはずです。

ちなみに

映画ではシナリオは Scenario あるいは Screenplay (スクリーンプレイ) と呼ばれます。

また、ハリウッド周辺の本屋さんでは映画のシナリオが普通に売られています。


日本でも購入できるみたいですね。ちょっと高い。


「YOKO ~がむしゃら~」
瑤子は文学部に通う普通の大学4年生。就職を決める時期にきて、なんとなく趣味
で始めていた写真から広告業界に行きたいと父親に相談するのだが、まったく相手に
されず、意気消沈してしまう。ある日、瑤子は午後の授業が休講でいつもより早めに
帰宅につく。電車の吊革につかまり何気なく車窓の外に目をやると、母校である高校
の杉の木が目に入る。たまには行ってみようと、母校を訪ねてみる。そこでかつて自分
がやっていたバスケ部の練習に出会う。

『瑤子の場合』シナリオ
シナリオ『ヨーコの場合』第5稿

『瑤子の場合』絵コンテ
瑤子の場合_絵コンテ

全カット表
瑤子編-全カット表 (2)

香盤表(カット表とカットの順番が違う⇦その日の効率よい撮影の順番を決めてある)
瑤子編-1129香盤表

香盤表
瑤子_香盤表

ビデオコンテ/完成動画比較

完成ムービー

今日紹介した本
工学的ストーリー創作入門

ストーリーアナリスト―ハリウッドのストーリー分析と評価手法

映画用脚本シナリオテンプレート WORD版

おまけ

プロットとは?

さて、シナリオを書く前に企画やコンセプト、テーマ性、メッセージなどを考えてみてください。

いきなりシナリオを書き始めてもいいのですが、出来ればプロットを考えてみてください。

プロットというのはシナリオのような描写やセリフなどは入りません。代わりに物語が進行する時の要点を記したいきます。ただし、単に要点を書けばいいのではなくて何がポイントかを記述していきます。

プロット Plotとは、脚本を書くにあたっての”骨”を作る作業のこと
または、それぞれの”骨”の部分を確認し、全体として流れが導かれて、間違った方向に行っていないかを確認する作業

プロットPlotの本来の意味は、筋・構想・策略を練る、描く、見取り図など

その物語の主題テーマ、設定、背景、相関関係、エピソード、因果関係、変化を分かりやすく書き記したものです。

主題テーマ 作品のテーマ
設定    登場人物の設定
背景    物語の世界観や時代背景、設定
相関関係  登場人物同士の関係
エピソード 物語で起こる事件やエピソード
因果関係 人物とエピソード、エピソード同士の関係
変化    物語の進行により、人物の心情や設定の変化

 

登場人物とその設定と役割
主人公 配置 性格

その上で時間経過による「感情の変化」「状況の変化」を記述する

主人公や登場人物が置かれている境遇
その中でも不安定な要素を作っていきます。その不安定な要素がどちらかに動き出したり、転がり出すことが物語の流れ、つまりストーリーなのです。

不安定な要素
葛藤、臆病、苦悩、弱点、支配、欠点、焦燥、挫折、消失、障壁、不信、優柔不断、

対立する立場、関係
善と悪、利害関係、反発、

感情、心情、心理
不安、恐怖、苛立ち、怒り、驚き、喜び、

デフォルメ
誇張、悪、秘密

アクションとリアクション

動機づけ、行動

感情移入 驚きサプライズ

時間軸の流れ

自信、勇気、愛、友情

プロットの書き方は、いろいろとありますが、フローチャート的、関係図的な書き方を勧めます。

つまり登場人物、背景、設定、時間の流れ、お互いの関係、変化が分かるように線を引きながら書くことです。

『プロット』の例

テーマ「夢」
主人公=弟、兄、父、母。4人家族。

父親は炭坑夫で一家を支えるために近くの炭坑で重労働をしている。
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兄弟はまだ学生で兄は父親と同じ炭坑夫になるつもり。
⬇︎
弟はまだ進路を決めていないが、兄は大学に行けと言っている。
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エピソード
兄は、弟のために炭坑夫になる
ある日、父親の炭坑で落盤事故があり、父親が亡くなってしまう。
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しかも兄を助けに行って帰らぬ人となってしまった。
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弟は、父親の死を受入れることが出来ず、兄の事をどこかしら恨んでいる
兄はどうして父親を助けられなかったのか。
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弟は、大学に行く夢を諦め、消防夫になろうとしている。
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母親は、兄の事が心配で弟と同じ消防夫か警察官になれと言う。
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弟は、消防夫の訓練に受かり、消防署に配属される。
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そんな時、また炭坑で落盤事故が起きる
⬇︎
生存者は、いないかもしれない
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でも、小さな空気孔から現場まで行けるかもしれない
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今度は弟が助けにいく
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母親は、泣きながらお前まで失いたくない、と言う
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弟は、父親を助けられなかった分、今度はみんなを助けたいんだ、と言う
⬇︎
ここで行かなければ、一生後悔するかもしれない
⬇︎
弟は母親の思いを振り切って落盤事故現場に行く
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現場では、何人かが生き埋めになって出られないでいた
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そこに兄の姿が、兄は他の仲間を助けるために残っていた
⬇︎
弟は兄と一緒に炭坑夫の仲間たちを助け始める
⬇︎
そして兄が父を助けられなかったのは
父が同じように仲間を助けるために
最後まで残っていたからだという事を知る
⬇︎
兄は兄で他の仲間を助ける事を優先して
父が奥にいく事を止められなかったのだと
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そして兄への誤解が解ける
⬇︎
その時、大きな煙と小爆発が
二人の運命は
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心配する母親
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しばしの沈黙の後
トンネルの入口から
出てくる二人と仲間たちの姿が見える
⬇︎
安堵する母親
エンド

これがプロットです。大きなあらすじと言えるかもしれませんが、違いはこれをシナリオに落とし込むときに必ずしもすべてのプロットがシナリオに反映されるとは限りません。例えば、シナリオの書き出しは、もしかしたら父親の葬儀から始まるかもしれないからです。でも前提となる設定やそこに至った経緯を明らかにするうえでプロットにその背景となる事実や設定を記しておくことは重要だと考えます。

 

(ここからは引用してます)

「脚本の書き方講座」(『トイ・ストーリー3』BD版特典映像)では、ピクサーの『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』を例にしながら、本作の脚本家が第1幕の作り方を順を追ってわかりやすく紹介している。いわく「本当に難しいのは結末でなく冒頭」