モーションコントロールカメラを極める

本日の話は、

『モーションコントロールカメラを極める』と題してお届けします。

モーションコントロールカメラの特徴、時代的背景、その作品を取り上げてみます。そして、IPUTで所有しているedelkrone社のモーションコントロールカメラも紹介します。どんなことが出来るのか、どんな可能性を秘めているのかを、一緒に考えてみたいと思います。加えて、『DORAGONFRAME』というコマ撮りアニメーションソフトもモーションコントロールカメラとの親和性が高いので取り上げます。

今日は時間の都合で話が出来ないと思いますが、近年は、マッチムーブソフトが発達してきました。それにより実写で撮影したカメラの動きをポスト処理的に解析することが可能になってきています。そのことは以前のモーションコントロールカメラからCG側へのデータの動きの受け渡しというパイプラインがなくなることを意味しています。確かにマッチムーブソフトモーションコントロールカメラの仕事を奪ったかに見えました。しかし、実写同士の動きの合成やハイスピードカメラとの組み合わせではモーションコントロールカメラにしかできない世界がまだまだあるということを理解しておいてほしいと思います。

モーションコントロールカメラ Motion Control Camera

モーションコントロールカメラとはコンピューターで制御する事が出来るカメラ、あるいはオペレーションすることをいいます。簡単に言うとロボットアームみたいなものです。その先にカメラをつけたものをモーションコントロールカメラと言い、別の被写体を取り付けて連携を図りながら撮影する場合もあります。

モーションコントロールカメラとは

コンピューターで制御する事が出来るカメラ、あるいはオペレーションすること

モーションコントロールカメラのルーツ

元々は1975年「スターウォーズ」シリーズを作るためにジョージ・ルーカスが設立したVFX工房のILM(Industrial Light & Magic)で開発されました。特撮の巨匠ジョン・ダイクストラが作ったダイクストラフレックスDykstraflexという工業用ロボットアームの改造が最初とされています。ダイクストラは同じ動きを何回も繰り返すことの出来るこのカメラによって、「スターウォーズ」の宇宙シーン、追跡シーンなどを数多く撮影しました。

「ジョージ・ルーカスのデジタル革命」

Star Wars Visual Effects, from AT-ATs to Tauntauns
(モーションコントロールカメラ 02:34〜)

今日、プロの現場で有名なのは英国製MRMC社のMILO(マイロ)とBOLT(ボルト)です。MILOはもう20年以上も映像業界のデファクトスタンダードの地位を築いてきました。いまだに現役で活躍しています。

BOLTは今までのMILOとは違い、リニア駆動で高速に動くことが特徴です。また1000fpsクラスのカメラと組み合わせることで超ハイスピードの映像を実現出来ます。

 

共に英国MRMC社が開発元です。

モーションコントロールカメラ 6軸の制御で細かい制動が可能

新しい高速移動が可能なBOLT ハイスピードカメラとの連携
Bolt Stiller Behind the Scenes

モーションコントロールカメラの特徴

モーションコントロールカメラの特徴

1) 同じ動きを繰り返すことが可能

2) CGとの双方向にカメラや動きのデータの受け渡しが可能

モーションコントロールカメラの最大のメリットは、同じ動きを繰り返すことが出来ることです。そのため、
多重露光多重合成マスク処理などが可能になります

あるいは動きをキーフレームで制御しているので
CGにデータを受け渡すことが出来る
逆にCGから動きを持っていくこともできるので、CGとの合成なども可能になります

しかし、近年はマッチムーブソフトが登場し、実写のフッテージからのカメラデータを解析することが出来るようになりました。特に空撮や手持ちカメラなどの自由に撮影したフッテージでも解析可能なため、CG合成としては非常に有効な表現となっています。それでも、モーションコントロールカメラは実写同士での合成には効果的なので、現在でも場面転換や同ポジの中のギミックなどに大変使われています。

モーションコントロールカメラとは何?

いくつかのモーションコントロールカメラの事例を見ていきましょう。

やはりこのPVが有名です。
Kylie Minogue – Come Into My World (Official Video)

4周しているそれぞれのテイクを重ねていくと

監督ミッシェル・ゴンドリー自ら語るメイキング

CG MAYAのデータからMILOに動きを移植、プレビズと実写の動きを合わせる(資料)
HONDA FOLZA CM

perfume 「DISPLAY」(short ver.)

もうひとつ、ドラマのエンディング映像『プロポーズ大作戦』エンディング
サザンオールスターズ『明日晴れるかな』
凄くよくできています。これもMILOです。桑田さんが出現したり、消えたりするところが
モーションコントロールカメラの面白さをうまく引き出しています。

 

実は『ゼログラビティ』の中でも使われていました。この時には、カメラ側と役者の乗ったケージの制御

さて、ここまでは『映像論』でも話した内容です。

次は、モーションコントロールの未来の話です。

モーションコントロール=プログラム制御してカメラの軌道を作る という風に考えれば、カメラワークはもはやロボットアームに載せる必要もなくなります。ドローンカメラでモーションコントロールするやり方もあります。

実際にはモーションキャプチャー(Opti Track)とプログラム制御でドローンに同じ軌道を飛行させています。

そして、お待ちかねIPUT所有のモーションコントロールカメラの話です。

edelkrone モーションコントロールカメラ

本日はIPUTが所有する edelkrone社製のモーションコントロールカメラを紹介します。そして、どんなことができるのか、どういう可能性を秘めているのかを考えていきたいと思います。今現在、IPUTが所有しているモジュールは次の通りです。

SliderPLUS PRO Long
HeadONE
HeadPLUS
Steady Module
Slide Module v
StandONE
JibONE
Focus ONE
Laser Module
Product Turntable Ki

こんなところです。もうすでに新モデルが出ているものもありますが、DSLR(デジタル一眼レフ)用としては充分なものです。

実際に291スタジオでedelkroneで撮影したムービーです。⇦⇦⇦簡単に作れてしまう

コマ撮りアニメーション用ソフトDRAGONFRAMEとの連携

また、『DRAGONFRAME』というコマ撮りアニメーション用のソフトも所有しています。『DRAGONFRAME』はモーションコントロールカメラと組み合わせて同じ動作の撮影やDMXでの照明の変化に対応させたアニメーションを実現させることができます。

つまり、

モーションコントロールカメラコマ撮りソフトを組み合わせることにより、

動きのあるコマ撮りアニメやタイムラプス、照明ライティングを制御した動きやCGとのライティングの同期が可能になる

次は、モーションコントロールカメラとは違うトラッキングという技術を紹介します。もう、After Effectsで体験している人もいるかと思います。

トラッキング Tracking とは?

トラッキングとはトラック=Track 追跡する、追いかける、という意味です。実写のフッテージの中にサンプリングポイントを任意あるいは恣意的に抽出して、そのポイントをトラッキング(追跡)します。その結果を2次元、3次元の空間座標に展開したものが、2Dトラッキング、3Dトラッキングと呼ばれるものです。トラッキングの技術を使うことで例えばモニター画面の中に映像をはめ込んだり、看板を差し替えたり、することが出来ます。

マッチムーブ Matchmove とは?

マッチムーブ、あるいはカメラマッチムーブとは、上記のトラッキングのうち3Dトラッキングの機能を使って実写のフッテージからカメラの画角、動きを解析してCGのカメラを作り出したものです。この技術によって、空撮や激しいカメラワークでもそのフッテージにCGの要素を違和感なく合成することが出来るようになりました。このマッチムーブは2000年以降の数々の映画で応用されています。当時の代表的なマッチムーブソフトは英国2d3社の boujouがあります。

特に皆さんの良く知っている映画『ハリーポッター』シリーズの中でたくさん使われています。言い換えれば、『ハリーポッター』の世界を実現させるために発達していった技術です。

トラッキングソフト選択ガイド(2018)

現在は、バージョンが進んでいます。IPUTにはPFTrack、NUKEを所有しています。

今はもう見られなくなったが、英国2d3社の boujouのデモリール

フェイシャルのマッチムーブ

さて、今日はMotionControlCameraとMatchMoveを取り上げました。
この2つの手法はどのように使い分けていったらよいでしょうか?

映画『アントラージュ』のOPタイトル
ハリウッドのスターたちの取り巻き連中を描いた群像ドラマ ハリウッドのショウビズの裏側がリアルに描かれている

Cinema4DはMAYAや3dsMAXよりも操作が簡単です。物理シミュレーションなどはボタン一つで操作できます。次の例を見てください。

これはCinema4Dフルパッケージ版のDynamic Simulationを使ったものです。オブジェクトに「Mograph」/「Moronoi Fracture」 や「Simulation Tag」/「Rigit Body」と「Collider Body」を付けただけです。 あっという間にできてしまいます。

 

参考のチュートリアルを挙げておきます。

映像論での『モーションコントロールカメラ』映像アーカイブ